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鼠径ヘルニアの最新手術 : 単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術 TEP

2017.07.01

治療コラム

鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)とは?

鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)とは、専門的には「腹膜に覆われた臓器がヘルニア門をとおして腹腔側から鼠径管内に脱出している病態」とされます。
漢字ばかりで難しいですね。
分かりやすく解説しますと、お腹のなかの臓器が、太ももの付けね(鼠径部/そけい部)のすき間から皮膚の下に出てきた状態です。

俗に脱腸とよばれます。

鼠径ヘルニアには、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアなど いろいろなタイプがあります。

鼠径ヘルニアの初期症状は、痛みや違和感ですが、この段階での受診をためらう方がいらっしゃいます。
次の項目で、早い段階の治療のメリットをお話ししましょう。

鼠径ヘルニアの治療方針

鼠径ヘルニアの治療法は手術です。
手術以外に有効な治療法はなく、ヘルニアが自然治癒することはありません。

脱出した腸管や脂肪が腹腔内に戻らなくなり、血流が悪化した状態を「嵌頓(かんとん)」といいます。
腸が嵌頓・壊死した場合は、緊急手術を必要とします。
嵌頓は、鼠径ヘルニア全体の5%くらいに起こるといわれています。

鼠径ヘルニアが嵌頓して緊急手術になる可能性を考慮すると、待機・予防的に手術を受けていただいた方が安全であるといわれています。

TEP(単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術) : 鼠径ヘルニアの最新手術

近畿中央病院の外科では、「腹膜外腔アプローチ 単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(SILS-TEP)」を積極的に行っています。

SILS-TEPは、両側にできた鼠径ヘルニアに対しても臍(へそ)部1か所の手術創から同時に治療できるため、手術後の整容面にも優れた手術法です。

単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(SILS-TEP)は高度な技術を必要とするため、施行できる施設はほとんどありません。

※TEP法(腹膜外アプローチ)以外に、腹腔内からヘルニアを修復するTAPP法(腹腔内アプローチ)をお勧めする場合もあります。

※癒着などのため、腹腔鏡手術が安全に施行できないと判断した場合、開腹手術に移行する可能性があります。

2.5cmほどの切開部よりカメラや鉗子を入れます
手術創も比較的小さくなります

最新の腹腔鏡手術システム

当院では、兵庫県下で最も早く、最新の腹腔鏡システムVISERA ELITE Ⅱビデオシステムセンター(OTV-S300)を導入しました。

同時に4K-3Dモニターも導入したことにより、操作性に加えて視認性が大幅に向上し、細かな血管まで、よりクリアな映像のもとで手術を行っています。

鼠径ヘルニアに対する臍部単孔式腹腔鏡手術(SILS-TEP法)を行う環境としては、理想的な設備といえます。

安全性について

併存疾患の多いご高齢の方、腹部の手術歴がある方、メッシュ使用後の再発で手術が難しいといわれた方でも、腹腔鏡を用いて安全に手術可能です。

単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(SILS-TEP)の再発率・合併症率は非常に低く、今までの良好な手術成績を国内外の学会や医学雑誌で発表しています。

入院期間や手術後の日常生活復帰

入院期間について

鼠径ヘルニア手術では、2泊3日の短期入院を基本としています。
手術後4時間で歩行を開始します。
手術当日の夕食より、経口摂取を再開します。
重たいものを持ったり、激しい運動の必要がなければ、手術翌日からの仕事復帰が可能です。

時間に余裕のない方も、無理なくスケジュールに組み込んでいただけるよう、入院期間・手術日程については、可能な限り調整させていただきます。

退院後 (外来受診や経過チェック)

退院後、1週間前後で、初回の外来受診をしていただきます。きずに問題がなければ、入浴可としています。

手術後 3ヶ月で、最終チェックのために外来受診をしてもらいます。

日常生活への復帰・運動するのに要する期間

日常生活への復帰は術翌日から可能です。
事務仕事などであれば、術翌日から復帰可能です。
ジョギングなどは 3-4週間後からとしています。

退院後の異常に対して

鼠径部が再度、はれてきても、ほとんどの場合は水が貯まっているだけ(漿液腫:しょうえきしゅ)で、問題ありません。
おへそのきずが赤くなって腫れてきたり、痛んだり、膿が出てきた場合には、早めに受診してください。

早めに受診しましょう

手術の技術や機器の性能は進歩しています。

恥ずかしがって受診をためらうより、負担の少ない治療を選択できるうちに医療機関を受診しましょう。

単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(SILS-TEP)担当医

若杉 正樹 (近畿中央病院外科医長)

開業されている先生方におかれましては、鼠径ヘルニアが疑われる患者さまが受診されましたら、ぜひ、当科外来までご紹介ください。

可能な限り腹腔鏡を用いて、安全かつ低侵襲な手術を行っています。

また、ヘルニア嵌頓・腸管壊死で緊急手術が必要な場合も、速やかに対応させていただきます。

 

  • 日本外科学会 専門医
  • 日本消化器外科学会 指導医・専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器がん外科治療認定医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医
  • 日本消化器内視鏡学会 専門医
  • 日本消化器病学会 専門医
  • 日本がん治療認定医機構認定医
  • 日本肝胆膵外科学会評議員
  • 日本ヘルニア学会評議員
  • 近畿外科学会評議員
  • 近畿内視鏡外科学会世話人
  • 米国消化器内視鏡外科学会(SAGES)international member
  • 腹膜外腔アプローチ単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術 導入後連続300例の検討
    若杉正樹ほか
    外科77巻13号 Page1546-1551, 2015年
  • 腹膜外腔アプローチ 単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術に対する2泊3日クリニカルパスの有用性
    若杉 正樹ほか
    臨床外科71巻1号 Page97-102, 2016年
  • Single-incision totally extraperitoneal inguinal hernia repair: our initial 100 cases and comparison with conventional three-port laparoscopic totally extraperitoneal inguinal hernia repair.
    Wakasugi M et al.
    Surg Today. 2015;45:606-10.
    www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24973058
  • Single-incision totally extraperitoneal inguinal hernia repair is safe and feasible in elderly patients: A single-center experience of 365 procedures.
    Wakasugi M et al.
    Asian J Endosc Surg. 2016;9:281-4.
    www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27188648

 

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