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比較的よくある内分泌疾患~甲状腺・副甲状腺~

2018.10.12

医療コラム

内分泌疾患(ホルモンの病気)というと、クッシング症候群や褐色細胞腫、先端肥大症などが(医師の間では)有名ですが、日常診療ではこれらの疾患にはなかなか出会うことはありません。

それでは、内分泌疾患は稀なものばかりかというと、そうではなく、日常診療でも比較的よく出会う疾患がいろいろあります。

ただ、心臓病や胃腸の病気のように限局された臓器の疾患であれば、わかりやすく、診断もつきやすいのですが、内分泌疾患の場合は、いろいろな臓器に少しずつ(?)変化がでていることが多く、なかなか気付きにくいものなのです。

そんな内分泌疾患をいくつかご紹介しましょう。

慢性甲状腺炎(橋本病)

中年女性に多く、知らず知らずのうちに少しずつ甲状腺ホルモンが低下して行く病気です。

甲状腺とは首のところ、気管の前に張り付いている蝶型をした臓器で甲状腺ホルモンを分泌しています。

このホルモンは、熱を産生したり栄養の代謝を調節したりして体全体の調子を整える働きがあります。

したがってホルモンが不足すると、寒がりになったり肩こ
りがきつくなったり、便秘がひどくなったりして、なんとなくしんどい状態に陥ります。

更年期障害にも似ています。

ホルモン補充療法を受けるとすっかり元気になります。

高齢者に発症した場合は、徐々に頭の回転が鈍ったり、動きが緩慢になってきたりしますので、認知症が
進んできたように見える場合があります。

もう歳だから…と思われていた方が、ホルモン補充ですっかり若返えられた方もおられます。

また、若年者にも発症する場合があり、この場合、特に結婚&出産適齢期の女性はきわめて、要注意です。

まず、甲状腺ホルモンの不足が、不妊や流産の原因になる事があります。

不妊症の方の10人に1人がごくわずかのホルモン不足に陥っており、また、ホルモン不足の方に補充を行う
事で流産や早産のリスクを軽減することができます。

妊娠中も、ホルモン不足に陥らないようにしなければなりません。

お母さんから胎盤を通して移行した甲状腺ホルモンが、胎児の発育に大事な働きをしています。

特に妊娠初期、ホルモンが不足すると胎児の脳の発達に悪影響が出る事があります。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

バセドウ病は、橋本病とは反対に甲状腺ホルモンが過剰になる病気です。

バセドウ病は、甲状腺を刺激する物質(自己抗体)が血液中に増加したために、甲状腺が過剰に反応して必要以上のホルモンを産生するようになったものです。

全身の新陳代謝が活発になり、交感神経が異常に高まった結果、汗が増える、手が震える、暑がりになる、ドキドキする、食欲旺盛になるが体重は減ってしまう、などさまざまな症状が出現します。

傍から見ると、イライラしたり焦っていたりするように見えますし、眼が大きくなったように見える事もあります。

多くの場合、甲状腺ホルモンの産生を抑える薬を服用することにより、過剰にあったホルモンを適正な量に下げる事ができます。

薬がうまく使えない場合は、手術やアイソトープ治療が必要になることもあります。

橋本病と同じく、若い女性は要注意です。

バセドウ病を治療しないまま妊娠すると、流産や早産が増えるとの報告がありますので、事前にホルモン値を測って必要であれば、治療を開始しておくことが肝要です。

亜急性甲状腺炎

初めは鼻水やくしゃみなどの風邪症状です。

風邪薬を飲んでましになったかと思っているうちに熱が高くなって、のどの痛みがどんどんひどくなって行きます。

そのうち、脈が速くなって動悸を感じたり、じっとしていても手が震えてきたりして異様にしんどくなったりします。

甲状腺ホルモン値の測定と、甲状腺の超音波検査で診断することができます。

症状がきつい場合はステロイド治療が必要です。

副甲状腺機能亢進症

なんとなくしんどい、脱力感、頭がすっきりしない、血圧が高いなど、捉え所のない症状がでる。

でもこの段階で診断されることはまずないでしょう。

当院の経験では、骨密度がとても低くなっていること、あるいは、まだ若年なのに胸椎や腰椎の圧迫骨折を起こされたことがきっかけで診断されています。

また、腎結石を繰り返す方も要注意です。

副甲状腺とは甲状腺のすぐ裏側にはりついている米粒大のホルモン臓器で副甲状腺ホルモンを分泌します。

ここに腫瘍ができると、ホルモンが過剰に分泌され、その結果骨が薄くなったり、石ができやすくなったりするのです。

手術でその腫瘍を取り除くと治ります。

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その他にもいろいろありますが、今回はこのあたりで失礼させていただきます。

皆さまの健康維持のご参考になれば幸いです。

 

健康管理センター長・内分泌内科部長
斎藤 博

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